仮定法過去の使い方|「もし〜なら…なのに」を表す表現

英語には、現実とは違う状況を想像して「もし〜なら…なのに」と言いたいときに使う文型があります。これが仮定法過去です。
名前に「過去」とありますが、必ずしも過去のことを表すわけではありません。現在の事実と異なることを仮定している、というのがポイントです。
今回は非現実の出来事を表す時に使う仮定法過去について、文法のポイントや具体的な使い方について解説していきます。
1. 仮定法過去の基本ルール
現実とは異なることを仮定して「もし〜なら…なのに」を表すときに、英語では仮定法過去が使われます。
仮定法過去は次のような形をとります。
If + 主語 + 動詞の過去形, 主語 + would / could / might + 動詞の原形
例文を見てみましょう。
- If I had a car, I would drive to work.
(もし車を持っていたら、仕事に車で行くのに)
実際には「車を持っていない」ので、現実とは異なる仮定を表しています。
ここで注意したいのは、if 節の「過去形」は時制ではなく「非現実」を表す印だということです。
「過去に車を持っていた」という意味ではなく、「今は車を持っていない」という事実を前提にしています。
このように、単なる過去の出来事ではなく、現在の事実と異なる想像や願望を表す点が仮定法過去の特徴です。
2. be動詞は were を使う
仮定法過去では主語が I や he / she / it といった単数形でも、be動詞は were を使います。
- If I were you, I would not do that.
(もし私があなただったら、そんなことはしないだろう)
現実には「私はあなたではない」ので、この文は仮定法になります。
ただし日常会話では was を使う人も多く、特にアメリカ英語では “If I was you” と言う人も少なくありません。
フォーマルな場面や試験では、基本的に were を使うことが推奨されています。
3. 主節の助動詞によるニュアンスの違い
仮定法過去の主節には would / could / might を使います。それぞれ少しずつニュアンスが違います。
would(〜だろうに) → 最も一般的
- If I studied harder, I would pass the exam.
(もっと勉強すれば、試験に合格するだろうに)
could(〜できるのに) →可能性や能力を表す
- If I had more free time, I could learn Spanish.
(もっと時間があれば、スペイン語を学べるのに)
might(〜かもしれないのに) → 弱い可能性
- If we left now, we might catch the last train.
(今出発すれば、終電に間に合うかもしれないのに)
このように、助動詞の選び方で「確実性」や「可能性」の度合いを調整できます。
4. 仮定法過去の具体的な使い方
4-1. 今の事実と違うことを仮定する
- If she were here, we could start the meeting.
(もし彼女がここにいたら、会議を始められるのに)
→ 実際には彼女はいない - If I were rich, I would travel the world.
(もしお金持ちなら、世界中を旅するのに)
→ 実際にはお金持ちではない
4-2. 自分の立場に置き換えて考える
- If I were you, I would talk to the teacher.
(もし私があなただったら、先生に相談するだろう)
日本語の「もし自分だったら〜する」に対応する表現です。
4-3. If を省略した倒置表現
フォーマルな文章では if を省略して、主語と助動詞を倒置させることがあります。
- Were I you, I would accept the offer.
もし私があなただったら、その提案を受け入れるだろう。
口語ではあまり使われませんが、書籍や試験で出てくるので要チェックです。
5. 日本語との違いに注意
日本語の「もし〜なら…なのに」は、時制に関係なく同じ形で表せます。
しかし英語では「現在と違うことを仮定」する場合は仮定法過去、「過去と違うことを仮定」する場合は仮定法過去完了を使い分けます。
- If I had wings, I would fly.
(もし翼があれば、飛ぶのに)
→ 今は翼がない → 仮定法過去 - If I had studied harder, I would have passed the exam.
(もっと勉強していたら、試験に合格していただろうに)
→ 過去に勉強しなかった → 仮定法過去完了
仮定法過去と仮定法過去完了の区別は、英語学習者にとって特に混乱しやすいポイントです。
6. まとめ
- 仮定法過去は「もし〜なら…なのに」という、現実と異なる想像を表す。
- 「仮定法過去」は「時制の過去」ではなく、「非現実の仮定」を示す印。
- 基本形:If + 過去形, 主語 + would / could / might + 動詞原形
- be動詞はすべて were を使うのが基本(会話では was もよく使われる)。
- 助動詞によってニュアンスが変わる:
1. would → 確実性(〜だろうに)
2. could → 可能性(〜できるのに)
3. might → 弱い可能性(〜かもしれないのに) - if を省略した倒置表現(Were I you…)もある。